家庭用プリンターでトレーシングペーパーに印刷する ~プリンター編~

今日はチビトロニクスから離れて、クラフトに関する基礎実験をしてみたいと思います。

今回実験するテーマは”家庭用プリンターでトレーシングペーパーに印刷する”です。

きっかけは家庭用のプリンターでトレーシングペーパーに印刷するとき、キャノンのプリンターだと滲まずに印刷できるのに、エプソンのプリンターだと滲んでしまうという記事をネットで見たことです。

ちょうどいいことにうちにはキャノンとエプソンのインクジェットプリンターがあり、さらにカラーレーザープリンターもあるので、この3台のプリンターで実験をしてみることにしました。

まずは使用するプリンターとトレーシングペーパーについてです。

注意:もともとインクジェットプリンターでトレーシングペーパーに印刷するのはメーカー推奨というわけでもなく、下手をすると紙が中に巻き込まれて取れなくなったり、インクがローラーについてしまって紙が汚れるようになったりなどトラブルが起きる可能性がありますので、あくまでも自己責任でお願いします。
また、インクジェットプリンターも、同じメーカーでもプリンターの型番が違えば使われているインクも違うので単純にキャノンだから、エプソンだから必ずこの実験と同じ結果になるとは限りません。
大事なものを印刷する前は必ずご自身でテストプリントしてみることをお勧めします。


今回の実験に使用したプリンターはこの3台です。

CANON TS8030RD インクジェットプリンター
写真ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、グレーの5色の染料インクと文字ブラックの顔料インクを搭載した機種で、背面給紙のあるタイプです。


EPSON EP808AR インクジェットプリンター
ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンタの6色の染料インクを搭載した機種で、背面給紙のあるタイプです。


OKI C332dnw カラーレーザープリンター
ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色のトナーを搭載した機種です。


まずはそれぞれのプリンターでトレーシングペーパーに印刷するとどうなるか、試しに1枚プリントしてみました。

インクジェットプリンターでトレーシングペーパーに印刷するときの設定は、いろいろ調べたのですが、写真用紙とかではなく普通紙に設定するのがよいとのことだったので、設定は”カラー 普通紙 標準”で、背面給紙トレイから手差し印刷してみました。
(下のトレイからではうまく給紙されませんでした。)

まずはコクヨの75g/㎡の用紙を使ってみました。
ベタ面と細かい文字などが適度に混ざったデータを選んで印刷してみました。

キャノンのプリンターで印刷するとこうなりました。


滲まずにきれいに印刷できました。

次はエプソンのプリンターです。


うわさ通り、かなり滲みます。

次はカラーレーザープリンターです。


レーザープリンターはトナーと呼ばれる樹脂を熱で紙に焼き付けて印刷するので、印刷した場所はぴかっと光ったような感じになります。


やはりキャノンとエプソンではまったくできあがりが違いました。

それでは、違う紙を使うとどうなるのか試してみました。
SAKAEテクニカルペーパーのSトレーシング 75g/㎡に印刷してみました。

キャノンのプリンターで印刷してみたものがこちらです。


コクヨと同じように滲まずにきれいに印刷できました。

次はエプソンで印刷してみました。


今度は滲まずにきれいに印刷できました。

最後はカラーレーザープリンターです。


これも特に問題なくきれいに印刷できました。

キャノンやカラーレーザーは紙の種類にかかわらずきれいに印刷できましたが、エプソンは紙によって印刷結果が違うようです。

キャノンとエプソンの違いは黒の顔料インクが搭載されているかどうかなので、もしかしたらそれが関係しているのかもと思い、キャノンの顔料インクで印刷をしてみることにしました。

ここで染料インクと顔料インクについて少し解説します。
プリンターやスタンプなどのインクには染料インクと顔料インクがあります。
この2つはどう違うのでしょうか。
エプソンのHPによると、以下のような特徴があるようです。

~染料インクとは~
染料インクは、着色剤が溶剤中(ここでは水分)に溶け込んでいるインクです。
そのため、用紙に染み込みやすいという特性を持っています。
用紙に染み込むことで、光沢のある用紙へ印刷する場合には用紙の質感がそのまま印刷結果となり、光沢感のある写真印刷が可能です。
また、中間色の表現が得意であり、階調豊かに印刷できます。


~顔料インクとは~
顔料インクは、着色剤が溶剤中(ここでは水分)に粒子の状態で存在しているインクです。
そのため、着色剤が用紙の上に付着し、インクが用紙に染み込みにくいという特性を持ちます。
用紙に染み込みにくいため、インクが用紙へ付着した際にもインク径が広がらず、よりくっきりとした印刷が可能です。
また、顔料インクは、オゾンや光に分解されにくく、変色・褪色しにくいという特性があります。


エプソンでは全色染料インクのプリンターや全色顔料インクのプリンターはありますが、キャノンのように黒だけ染料と顔料の両方のインクを搭載しているようなプリンターはありません。
キャノンのプリンターに両方の黒が搭載されているのは、写真などを印刷するときは染料インクの黒を使って階調豊かに、文章などを印刷するときは顔料インクの黒を使ってくっきりと印刷できるようにするためのようです。

ということで、キャノンのプリンターの印刷設定を”文章”に変えて顔料インクで印刷してみました。


左が顔料インクの黒で印刷したもの、右が染料インクの黒で印刷したものです。
染料インクで印刷したものはやや青みがかった黒になり、顔料インクで印刷したものは赤みがかった黒に印刷されました。

顔料インクと染料インクを使い分けるための設定が分かったので、トレーシングペーパーに印刷して比べてみました。

SAKAEテクニカルペーパーの105g/㎡のペーパーに染料インクの方で印刷したものがこちらです。


滲まずにきれいに印刷できています。

次に同じ紙に顔料インクの方で印刷したものがこちらです。


インクが粒子状になってムラになってしまっています。
しかも、触ったら手にインクがつきました。


乾く前に触ってしまったわけではなく、インクが紙に定着せず、乾いているのにこすったら落ちてしまいます。
ほかの紙でも数種類試してみましたが、どれも同じようにこすったらインクが手についてしまいました。
トレーシングペーパーに印刷するのに、キャノンの顔料インクのモードは向いていないようです。
(エプソンの顔料インクについては試すためのプリンターを持っていないので、実験できませんでした。)

とすると、キャノンとエプソンのプリンターの違いは、染料インクの成分や出てくるインクの量などということになるのでしょうか。

そこで、エプソンのプリンターでインクの濃度を薄くして印刷してみました。


あまり効果はないようです。

そこで、他に滲まないように印刷できるものはないか探してみました。
武藤工業のインクジェットベーススプレーIJS-220というスプレーです。
速乾性で、紙にスプレーすることでインクジェットプリンターで印刷した時に滲みにくくする働きがあります。
1本でA4用紙96枚分にスプレーでき、864円です。
(A4 1枚当たり9円の計算になります。)


早速コクヨの75g/㎡の紙にスプレーしてから印刷してみました。


かなり滲みは改善されましたが、全く滲まないというわけではないので、少しでも滲むのは許せないという場合は使えないかも。

ちなみに、ここまでは印刷設定を”標準”にして印刷しましたが、”きれい”などにすると出てくるインクの量が増えて紙がビタビタになり、より一層滲みやすくなります。

キャノンのプリンターでコクヨの40g/㎡の紙に全面プリントしてみました。
滲まないので、とてもきれいに印刷できます。


これを同じ紙で設定を”きれい”に変えて印刷してみました。


確かに一見鮮やかできれいに印刷されていますが、実際は紙がしわしわになっています。

きれいに印刷できるキャノンでもこのような結果になるので、エプソンでは設定を変えても滲みは止められないと思われます。

そこで引き続き紙の種類を変えて、滲まずに印刷できるものがないか実験してみることにしました。

次回は、今回実験に使った紙について書いていきます。

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3 件のコメント:

  1. すごいです。実験もすごいし、内容も分かりやすくて感動。 ありがとうございます!

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    1. ついに自分の備忘録もかねて、クラフト基礎実験の記事を書いてみました。
      何かものすごくマニアックな記事に...。
      引き続きキャノンのプリンターバージョン、エプソンのプリンターバージョンも載せていきます。

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  2. 家庭用プリンターでも印刷できるトレーシングペーパーを探していまして、いろんな方の口コミとか見てきましたが、1番参考になりました。ありがとうございます。感謝いたします。

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